読みやすく伝わりやすい文章を作るための、「5つのステップ」

読みやすく伝わりやすい文章を作るためのコツについて書きます。

読みやすく伝わりやすい文章を作る能力を磨くことは、とても大切です。

読みやすく伝わりやすい文章を書く力がないと、職場の上司や同僚、取引先の方から、「頭の悪い人」と思われてしまいます。
一方、読みやすく伝わりやすい文章を書く力があれば、職場の上司や同僚、取引先の方から、「優秀な人」と思われるようになります。

また、「読みやすく伝わりやすい文章を書く力」を高めることは、論理的思考力を高めることでもあります。
論理的思考力が高まれば、その分、エクセルマクロを含めた新しいスキルを得ることも容易になります。
仕事で難しい課題に直面したとしても、それを切り抜けて、それどころか、周囲をびっくりさせるような成果に結びつけることもできるようになります。

このように、「読みやすく伝わりやすい文章を書く力」があるかないかの差は、言いたいことを伝えるのにかかる手間、人生で得られるチャンスの差、得られる成果の質、...と、いろいろなところに影響してきます。

とはいえ、「読みやすく伝わりやすい文章」というものは、「言いたいことをなんとなく書き並べていけば自然にできあがる」というものでもありません。

「言いたいことがあって、とりあえず文章にしてみた。だけど、なんか読みにくい。書いた自分で言うのも何だけど、分かりにくい...」
そんなことって、実際、よくありますよね。
そんななとき、どうしたらよいのでしょうか。

実は、「読みやすく伝わりやすい文章」を作るときには、おきまりの手順があります。 この手順を知っていれば、「言いたいことをなんとなく書き並べた」だけの文章を「読みやすく伝わりやすい文章」に直せるようになります。
また、何の下書きもなく、「読みやすく伝わりやすい文章」をいきなり書けるようにもなります。

この文章を読んでいるあなたにも、この「手順」を知って、使いこなせるようになってもらいたい!

ということで、このコラムでは、「読みやすく伝わりやすい」文章を書くためのコツを紹介します。

今回紹介する手順は、以下のものです。

  1. 一文一意。長い文がある場合は、複数の文に分割する。
  2. 各文を日本語として意味が通じるようにする。前の文との関係を示す言葉を追加する。
  3. 不要な言葉を削り、必要な情報を追加する。
  4. 機能のかたまりごとに分類し、段落のメリハリをつける。
  5. 読み直して、「言葉の意味」を中心に最終チェックをする。

これから、この手順を解説します。
題材として、実際に受講生から受けた質問の投稿を使います。

「言いたいことをなんとなく書き並べた」だけの「読みにくくて分かりにくい」質問文が、どのような過程を経て、「読みやすく伝わりやすい」文章になっていくのか...。

楽しみながら読み進めていただければと思います。


添削事例-お題紹介

とある方から、以下のような質問を受けました。

今現在、実務で作業している中で、毎月発生する操作を自動記録機能でマクロを作り、毎月発生する操作を保存して利用したいのですが、どのように保存したらよいのでしょうか?

読みにくくて、そして、何が言いたいのか分かりにくいですね...。
というか、分かりません。

この文章が「読みにくくて分かりにくい」なっている理由の大きなものは、以下の2つです。

  1. 長い文の中で、いろいろなことを一気に言おうとしているから
  2. 日本語がおかしいから

この2つの理由それぞれについて、もう少し説明します。

  1. 長い文の中で、いろいろなことを一気に言おうとしているから
    これは、典型的な、「長い文」です。
    「長い文」とは、「言いたいことを複数詰め込んだ文」と思っておいていただければだいたいOKです。
    この文章を読んでも「何が言いたいのか」が伝わらない理由のひとつは、一文の中にいろいろなことを詰め込みすぎていることです。

    参考のため、以下に、この文に詰め込まれている要素をリスト化してみました。

    • 実務でやっていることがある
    • 毎月発生する操作である
    • 自動記録でマクロを作って、保存して利用したいと思っている
    • どのように保存すれば良いのか教えて欲しい

    これらのことを、1つの文で言おうとしています。
    詰め込みすぎです。
    言いたいことを1つの文ですべて言おうとせず、複数の文に分けて、一つの文で言うことは、1つにとどめましょう。
    (「一文一意」と言います)


  2. 日本語がおかしいから
    さらに言うと、この文章は、長いだけでなく、日本語の文章としてもおかしいです。
    「毎月発生する操作を」という言葉が2回登場していますが、1回目と2回目でその指すものが違います
    前者は、マクロ化したい操作のことを指しています。
    一方、後者は、自動記録によって生成されるであろうマクロのコードのことを指しています。
    ひとつの文の中で言葉の意味がすり替わっているので、何がなんだかよけいに分からなくなってしまっています。

    どうしてこういうことになってしまうのかというと、その理由のひとつは、書いている文が「長い文」だということです。
    「長い文」に言いたいことをたくさんもりこもうとしてしまうと、どうしても、「言いたいこと」のすべてについてきちんと書けているかどうかのチェックがおろそかになってしまいます。
    主語と述語の関係がおかしくなってしまったり、言葉の意味が途中で変わってしまったりするのは、文章が「長い文」なせいで、本人も混乱してしまうからです。

なお、文末は「どのように保存したら良いのか」と締められていますが、この調子だと、「(マクロの)保存方法」だけを知りたいのかも怪しそうです。
この質問文を読んで、僕は、本当はもっと別のことも聞きたいのではないか?という印象を持ちました。
(後述しますが、事実、そのとおりでした)

ということで、この質問文には、いろいろ問題があります。
これからこの文章を直していきます。

まずは、事前準備。
質問者さんが聞きたいことが何なのか分からなかったので、「本当は何を聞きたいのか?」ということを確認してみました。

すると、以下の返答が来ました。

質問の主旨が分かりにくく申し訳ございません。マクロを別エクセルファイル内のデータに対して実行するために、保存する場所と保存したマクロを実行したいと思っています。

うーん...。
この返答の文章も、日本語としてひどいです。
「保存する場所と保存したマクロを実行したい」というのは、明らかに日本語としておかしいです。

以下の2つを知りたいということでしょうが、返信の文章では、前者を受ける動詞がありません。

  • 保存する場所を(知りたい)
  • 保存したマクロを実行したい

この質問者さんは、職場でもこんな感じなんでしょうか。


ちょっと脱線...

ちょっと脱線して、ここで、「きちんとした日本語を書くように気をつけること」の重要性について書きます。

普段から、きちんとした日本語を書くように気をつけたいところです。

なぜなら、職場で不利だからです。 こういう適当な日本語ばかり書いていると、職場の上司や同僚、取引先から、頭の弱い人と思われてします。

上司や、上司の上司から「日本語での説明能力も高く、しかもエクセルマクロをスラスラ書けるくらいにパソコンも得意な人」と思ってもらうことはとても重要です。
そう思ってもらえれば、あなたは、間違いなく、上司や、上司の上司にとっての、「大事な仕事について相談できる、片腕、相談相手」になれます。
出世街道の真ん中を楽しく歩く、楽しい職場生活を得られます。

一方、「頭が弱いけど、パソコンだけは得意」と思われてしまうと、どうなるでしょうか。
上司からそう思われてしまうと、パソコン作業はどんどん任されるようにはなるでしょうが、重要な仕事は一向にやってきません。
大事なことは、いつも他の人が決めている。自分はいつも蚊帳の外。
あなたは、上から降ってくる作業をより高速で行うだけのマシーン扱いです。
そういう人は、パソコン作業の量だけで評価される、残念な人として職場でのキャリアを終えてしまうでしょう。
キーボードの消耗に従って、あなたも消耗していきます。そして、いつか、使いものにならなくなったキーボードを破棄して新品に交換するように、「作業をより高速で行うだけのマシーン」というあなたにとって唯一の強みと言えるポジションも、より能力の高い別の誰かにとって変わられて終わりです。

また、人に相談をするときにも、不利です。
上手な質問をすれば一発で欲しい回答を得られる可能性が高いです。
しかし、おかしな日本語で質問をすると、最終的にほしい回答を得るまでに時間がかかってしまうからです。
回答者も、聞き返し等で工数が発生すると、言いたいことが分かって回答するまでによけいなやりとりでエネルギーを消耗してしまいます。
その結果、残ったエネルギーでできる範囲の回答しかもらえなくなってしまいます。
その分、どうしても、一発で回答をもらう場合よりも、受け取れる回答の質が落ちます。
あと、「頭の弱い人」と思われてしまうと、あなたの本当の頭のレベルにあった回答をもらえないかもしれません。
すごく平たく言うと、「やりとりが不必要に多いせいで回答者が疲れて面倒くさくなってしまい、受け取れる回答がどうしても雑になる」ということです。

さらに言うと、エクセルマクロの学習でも、不利です。
日本語運用能力も、プログラミング言語の能力も、言語運用能力の一種です。
これら能力は相互補完的です。
日本語運用能力が向上すると、エクセルマクロの能力も向上します。
エクセルマクロの能力が向上すると、日本語運用能力も向上します。
日本語運用能力とエクセルマクロの能力との関係については、こちらのページの記事を読んでください。


ちょっと、脱線してしまいました。

ともあれ、こちらから確認を行ったことで、質問者さんが聞きたいことはだいたい見当がつきました。
では、どのように直していくか。さっそくやっていきましょう。


添削の過程を示します

第一段階 - 一文一意。長い文がある場合は、複数の文に分割する。

元の文章は、以下のとおりでした。

今現在、実務で作業している中で、毎月発生する操作を自動記録機能でマクロを作り、毎月発生する操作を保存して利用したいのですが、どのように保存したらよいのでしょうか?

何はともあれ、長い文を、複数の文に分割するところからです。
とりあえず、以下のとおりにしてみました。

今現在、実務で作業しているものがあります。
毎月発生する操作を自動記録機能でマクロを作り、毎月発生する操作を保存して利用したいと思っています。
どのように保存したらよいのでしょうか?

1つだった文を3つに分けただけで、だいぶ読みやすくなりましたね。

文章が短くなれば、主語と述語の関係がおかしかったりといった問題があっても、すぐに気づくことができます。
また、修正も容易になります。

これで、第一段階は完了です。
次のステップへ。


第二段階 - 各文を日本語として意味が通じるようにする。前の文との関係を示す言葉を追加する。

各文を日本語として意味が通じるように直します。
さらに、前後の関係を示す言葉を追加します。

第一段階完了時点で、質問文は以下のとおりになっています。

今現在、実務で作業しているものがあります。
毎月発生する操作を自動記録機能でマクロを作り、毎月発生する操作を保存して利用したいと思っています。
どのように保存したらよいのでしょうか?

これを、たとえば、以下のようにしましょう。

今現在、実務で毎月発生する操作があります。
この操作を自動化するマクロを自動記録機能で作り、毎月発生する操作を保存して利用したいと思っています。
このような場合は、マクロをどこに保存したらよいでしょうか。

1文目から、順番に見ていきましょう。

今現在、実務で毎月発生する操作があります。

元の文章は、「今現在、実務で作業しているものがあります」というものでした。
何か言っているようで何も言っていないに等しいです。

そこで、ボリュームが大きかった2文目の冒頭にあった「毎月発生する操作」という言葉を1文目に持ってきて、質問の内容をより暗示させるものにしました。

この操作を自動化するマクロを自動記録機能で作り、毎月発生する操作を保存して利用したいと思っています。

「この操作を」という言葉を冒頭に置くことがとても大切です。

実務で毎月発生する操作があります。

この操作を...

ということですね。
前の文章からの流れを暗示させる言葉を先頭に入れると、文章は読みやすくなります。
「2文目は、さっき1文目で書いたこれについてのものだよ」と冒頭に書くことで、読み手に、「1文目で書いたことについて、これから続けて書くよ!」と、話の方向性をしっかり暗示します。

2文目内の「毎月発生する操作を」の部分は削除しました。

前述のとおり、1文目に移動させたものと2回目に登場したものとでは、意味が変わってしまっています。
言葉の意味を、文章の途中で変更してはいけません。
そういうことをすると、読者の混乱を招いてしまいます。

どうしようかと思ったのですが、2回目のものを削除してみたら、「○○を作り保存したい」と、幸いすっきり意味が通じました。
ということで、今回は、これで行きます。

続いて、3文目。

このような場合は、マクロをどこに保存したらよいでしょうか。

2文目と同様に、前の文章からの流れを暗示させる言葉を先頭に入れます。

したいと思います

このような場合は、...

という流れです。

この「第二段階」の完了時点で、各文は、以下を満たしている必要があります。
チェックしてください。

  • 各文は、日本語として意味が通じるようになっていること
  • 2文目以降では、前の文との関係を示す言葉が入っていること

ただし、「前の文との関係を示す言葉」は、必ず適切なものがあるわけではありません。
どうしても見つからない場合は、深く悩む必要はありません。いったん抜きにして、先に進んでしまいましょう。

チェックOKでしたら、先に進みます。


第三段階 - 不要な言葉を削り、必要な情報を追加する。

不要な言葉を削り、必要な情報を追加します。
言いたいことの過不足がないようにするためと、読みやすさをさらに向上させるためです。

第二段階完了時点で、質問文は以下のとおりになっています。

今現在、実務で毎月発生する操作があります。
この操作を自動化するマクロを自動記録機能で作り、保存して利用したいと思っています。
このような場合は、マクロをどこに保存したらよいでしょうか。

これを、たとえば、以下のようにしましょう。

今現在、実務で毎月発生する操作があります。
この操作を自動化するマクロを自動記録機能で作り、保存して利用したいと思っています。
このような場合は、マクロをどこに保存したらよいでしょうか。保存したマクロを実行する方法もあわせて教えてください。

1文目では、「今現在、」という言葉を削除しました。
なくても問題なく意味は通じるからです。
(「実務で」も、本当は不要かもしれません。少し悩みましたが、今回は残してみました)

2文目は、修正はなし。

3文目では、「保存したマクロを実行する方法もあわせて教えてください。」という一文を追加しました。
質問者さんが聞きかかったのは、以下のことでしたね。

  • (マクロを)保存する(のに適切な)場所
  • 保存したマクロを実行する方法

元の文では以下のうちの前者についてしか書いてありませんでした。
そこで、後者も追加したということです。

これで、第三段階は完了です。
次のステップへ。


第四段階 - 機能のかたまりごとに分類し、段落のメリハリをつける。

文を、機能のかたまりごとに分類し、段落のメリハリをつけます。

具体的には、まずは、文章をいくつかのかたまりに分類します。
そして、分類と分類の間に、空白行を入れます。

第三段階まででできあがった文章は以下です。

実務で毎月発生する操作があります。
この操作を自動化するマクロを自動記録機能で作り、保存して利用したいと思っています。
このような場合は、マクロをどこに保存したらよいでしょうか。保存したマクロを実行する方法もあわせて教えてください。

これを、たとえば、以下のようにしましょう。

実務で毎月発生する操作があります。
この操作を自動化するマクロを自動記録機能で作り、保存して利用したいと思っています。
(空白行)
このような場合は、マクロをどこに保存したらよいでしょうか。
保存したマクロを実行する方法もあわせて教えてください。

1-2文目が状況説明、3-4文目が具体的な質問です。
ということで、上の例では、この2つのかたまりの間に、空白行を1行入れました。

間に空白行が入る 「かたまり」のサイズは、あまり大きくならないように。
僕の場合は、「2-3行でひとかたまり」くらいを目安にしています。


第五段階 - 読み直して、「言葉の意味」を中心に最終チェックをする。

ここまでで手直ししてきた文章の品質チェックをします。

何度か読み直して、第一段階~第三段階でするべきことをしてきたか?やり忘れはないか?しっかり確認しましょう。
作った文章を声に出して読んでみるのもとても良いです。

このステップで特に注意したいのは、「言葉の意味」です。
以下の2点に気をつけてください。

  • 同じ意味のことは、同じ言葉を使いまわして書いているか?
  • 同じ言葉を、別の場所では違う意味で使っていたりしないか?

たとえば、以下では、「操作」と「保存」という言葉が何度もでてきます。
これは、よい例です。

実務で毎月発生する操作(*1)があります。
この操作(*1)を自動化するマクロを自動記録機能で作り、保存(*2)して利用したいと思っています。

このような場合は、マクロをどこに保存(*2)したらよいでしょうか。
保存(*2)したマクロを実行する方法もあわせて教えてください。

逆に、ダメな文章は、どういう感じでしょう。 以下では、「作業」、「保存」という言葉を、途中で別の言葉に置き換えてみました。
どんな印象を抱くでしょう。

実務で毎月発生する操作があります。
仕事を自動化するマクロを自動記録機能で作り、保存して利用したいと思っています。

このような場合は、マクロをどこに置けばよいでしょうか。
出来上がったマクロを実行する方法もあわせて教えてください。

急に、見通しが悪くなりましたね...。
同じ意味のことは、同じ言葉を使いまわして書きましょう。でないと、読者が混乱します。

さらに、「マクロ」という言葉も、「プログラム」や「コード」という言葉に変更しながら書いてみます。
以下では、変更箇所を赤で強調しないで表示します。
どんな印象を抱くでしょうか。

実務で毎月発生する操作があります。
仕事を自動化するマクロを自動記録機能で作り、保存して利用したいと思っています。

このような場合は、プログラムをどこに置けばよいでしょうか。
出来上がったコードを実行する方法もあわせて教えてください。

同じ意味の文章のはずなのに、かなり分かりにくくなってしまいました。

この短い文章のサンプルを読んだときに自分で気づいた方もいるかもしれませんが、人には、違う言葉が出てくると、「違う意味で使われている言葉なのだろう」と思いつつ文章を読もうとします。
逆に、同じ言葉が出てくると、「同じ意味で使われている言葉なのだろう」と思いつつ文章を読もうとします。

にも関わらず、文章の途中で「毎月発生する操作」という同じ言葉の意味が変えてしまったり、「マクロ」、「プログラム」、「コード」と、同じことを違う言葉で表現したりすると、読み手に対して、大きなストレスを与えてしまいます。

ここで作った文章は空白行を含めても5行くらいの分量です。
また、このコラムを読み進めてきたあなたは、この文章がどういうことを言おうとしているものなのか、もうよく知っています。
そういう状況であれば、読者に負担をかけても、まあなんとかなります。

ですが、20行-30行という長さになってくると、その文章をはじめて読む読者が被る負担は相当なものになります。

「読者が混乱する」ということは、「書き手も混乱しつつ書いている」ということです。

文章の書き手は、読み直しながら文章を書いているのですから、同時に、書き手であると同時に、読み手でもあります。

同じことを指す言葉を途中でどんどん変えていくようなこういう書き方は、「自分で自分を混乱させる書き方」だと思ってください。
こういう混乱を放置していると、「同じ言葉を、別の場所では違う意味で使ってしまう」という状況も発生しやすくなります。

ということで、第五段階での注意点でした。
「言葉の意味」を中心に最終チェックをしましょう。

改めて、最終形の紹介です。

元の文章は、以下のものでした。

今現在、実務で作業している中で、毎月発生する操作を自動記録機能でマクロを作り、毎月発生する操作を保存して利用したいのですが、どのように保存したらよいのでしょうか?

これが、最終的に、以下のものになりました。

実務で毎月発生する操作があります。
この操作を自動化するマクロを自動記録機能で作り、保存して利用したいと思っています。

このような場合は、マクロをどこに保存したらよいでしょうか。
保存したマクロを実行する方法もあわせて教えてください。

だいぶ、変わりましたね... (^^;

あとは、自分が書いた文章を、自信を持って人に渡してください!!


ここまでのまとめ

ここまでの添削過程を、以下に挙げたポイントに基づいて振り返ってみましょう。

  1. 一文一意。長い文がある場合は、複数の文に分割する。
  2. 各文を日本語として意味が通じるようにする。前の文との関係を示す言葉を追加する。
  3. 不要な言葉を削り、必要な情報を追加する。
  4. 機能のかたまりごとに分類し、段落のメリハリをつける。
  5. 読み直して、「言葉の意味」を中心に最終チェックをする。

以下は、上に挙げた各ポイントについての詳細です。

  1. 一文一意。長い文がある場合は、複数の文に分割する。
    最初に行った修正は、「長い1文」だった文章を、「3つの文」に直したことでした。
    このように、文が長いときは、とにかく、複数の文にしてみましょう。
    それだけで、だいぶ読みやすくなります。
    また、修正もしやすくなります。


  2. 各文を日本語として意味が通じるようにする。前の文との関係を示す言葉を追加する。
    元の文章では、「毎月発生する操作」という言葉が指すものが文章の途中で変わってしまいました。
    そういうことのないように。

    また、元の文章では、「保存する場所と保存したマクロを実行したい」という謎フレーズがありました。
    「保存する場所」→「を、知りたい」等、「保存する場所」という言葉を受けるものが必要でした。
    こういう修正も、この段階で行います。

    さらに、以下のように、文章の流れが分かりやすくなる言葉を文の先頭に入れましょう。
    「操作があります」→「この操作を...」
    「...したいと思っています」→「このような場合は...」
    ただし、こういう言葉は、必ず見つかるわけでもありません。
    どうしても見つからない場合は、深く悩む必要はありません。いったん抜きにして、先に進んでしまいましょう。


  3. 不要な言葉を削り、必要な情報を追加する。
    何が必要で何が不要かがはっきり分かるのも、長い文を複数の文に分割することのメリットのひとつです。
    今回の例では、1文目にあった「今現在、」という言葉は削除しました。
    また、本当は必要だったけれども抜けていた、「保存したマクロを実行する方法もあわせて教えてください」という言葉を追加しました。


  4. 機能のかたまりごとに分類し、段落のメリハリをつける。
    文章をいくつかのかたまりに分類します。
    そして、分類と分類の間に、空白行を入れます。


  5. 読み直して、「言葉の意味」を中心に最終チェックをする。
    ここまでで手直ししてきた文章の品質チェックをします。
    何度か読み直して、第一段階~第三段階でするべきことをしてきたか?やり忘れはないか?しっかり確認しましょう。
    作った文章を声に出して読んでみるのもとても良いです。

    最終チェック時には、特に、以下に気をつけると良いでしょう。

    • 同じ意味のことは、同じ言葉を使いまわして書いているか?
    • 同じ言葉を、別の場所では違う意味で使っていたりしないか?

ということで、本編は終わり。
以下では、別解をいくつか紹介します。


別解

最後に、今回紹介した添削の別解をいくつか紹介します。

別解1

実務で、毎月発生する作業があります。
この作業を行うマクロを自動記録機能で作り、毎月利用したいと考えています。
作業を行う対象のファイルは毎月異なります。

このような場合は、マクロをどこに保存したらよいでしょうか。
保存したマクロを実行する方法もあわせて教えてください。

よろしくお願いいたします。

コメント:
添削例とほぼ同じです。
ただし、「操作」という言葉を、「作業」になおしました。
○○を行う対象のファイルは毎月異なります」と書くとき、「操作」よりも「作業」のほうがしっくりきたからです。

また、作業内容が、「毎月別のファイルに対して行う」という類のものではなく、「同じファイルにデータを貼りつけてマクロを実行する」といったケースも考えられます。
「どこかから月次データを持ってきて、所定のファイルに貼りつけて、作業をする」というようなケースですね。
そうではなく、「聞きたいのは、作業対象のエクセルファイルが毎回異なる場合のことだ」としっかり示すべく、この一文を入れてみました。

「必要な情報かな」、「これをしっかり書かないと、誤解されないかな」と気になったことは、しっかり述べましょう。


別解2

実務で、毎月異なるファイルで行う作業があります。
この作業でのエクセル操作の内容は、毎回同じです。

この操作を行うマクロを自動記録機能で作り、毎月の作業に利用したいと考えています。

このとき、マクロをどこに保存したら良いのかということと、保存したマクロを実行するにはどうしたら良いのかということが分かりません。
よろしくご教示願います。

コメント:
本編で紹介した添削例、別解1と異なり、「作業」と「操作」という2つの言葉を使い分けた例です。
以下の流れで、「作業」と、「操作」の関係をしっかり示しつつ説明しているところがポイントです。

  • 毎月異なるファイルで行う作業があります
  • この作業でのエクセル操作の内容は

「操作」は、エクセルの操作だけ。「作業」は、そのエクセル操作も含めた、一連の業務内容を指しています。
それぞれの言葉が何を指しているか、よく確認しつつ読み解いてください。

また、複数項目を併記するときは、書き方を統一すると読みやすくなります。
この例では、以下の2つの「聞きたいこと」を、同じ「○○にはどうしたら良いかということ」という書き方で並べて書いています。

  • マクロをどこに保存したら良いのかということ
  • 保存したマクロを実行するにはどうしたら良いのかということ

別解3

実務で、毎月異なるファイルで行う作業があります。
この作業でのエクセル操作の内容は、毎回同じです。

このエクセル操作を自動で行うマクロを作って、毎月の作業に利用したいと思っています。
マクロの作成には、自動記録機能を使おうと考えています。

このとき、以下のことが分かりません。
・マクロをどこに保存したらよいか
・保存したマクロを実行するにはどうしたらよいか

手書きでマクロを作った場合であれば、○○を△△することでなんとかできます。
なのですが、自動記録で作ったマクロだと、○○を△△しようとすると、××となってしまいます。

アドバイスいただけないでしょうか。
よろしくお願いいたします。

コメント:
「(手書きではなく)自動記録でマクロを作った場合に固有の問題についてアドバイスを欲している」という想定で書いてみました。
後半部分で、状況をどのように説明しているかを参考にしてください。
「手書きの場合であれば解決できる能力が自分にはある」と、やり方を具体的に示しつつ述べました。
また、自動記録で作ったマクロについては、どのようなことを試したのかということについても述べました。
これにより、よりピンポイントかつ的確なアドバイスを得られる可能性が高まります。

前述のとおり、複数項目を併記するときは、書き方を統一すると読みやすくなります。
別解2では「自動記録でマクロを作り、利用したい」という文を、丁寧に説明するため、以下の2文に分割しました。

  • マクロを作って利用したい
  • そのマクロは、自動記録機能を使って作りたい

今回は、併記する項目を、箇条書きにしました。
箇条書きで記載された項目も「○○を××するどうしたらよいか」と、韻を踏んだ書き方に統一しています。

箇条書きは、仕事で文章を作成する際の有力な武器です。
上手に使えるようになりたいものです。

このほか、「マクロを利用」と「マクロを実行」という2つの言葉はほぼ同一のことを指しているので、これらを同じ言葉に直してしまうことも考えられそうです。


演習

「元の質問文」として紹介したものは、実は、いただいた質問文のうちの一部でした。
全文を示すと、以下のとおりです。

お世話になります。マクロ導入編から基礎編に進みながら、同時に導入編も併用して視聴させていただいています。今現在、実務で作業している中で、毎月発生する操作を自動記録機能でマクロを作り、毎月発生する操作を保存して利用したいのですが、どのように保存したらよいのでしょうか?過去の質問の中で、テキストの中に記載とあったのですが、導入編で見つけることが出来なかったのですが、基礎編に記載があるのでしょうか。申し訳ございませんが、教えていただければ幸いです。

(原文ママ。途中改行はありませんでした)

この文章全体を、「5つのステップ」に従って書き直してください。
ただし、「添削例」や、すでに紹介した「別解1-3」をそのまま利用することも可とします。


さいごに

読みやすく伝わりやすい文章を作るためのコツ、ご理解いただけたでしょうか。

読みやすく伝わりやすい文章を作る能力を磨くことは、とても大切です。
あとは、実践あるのみです。
どんどん、試してください。

もっとも、いきなりすべての項目で満点!と言えるような完璧な文章を作れるものではありません。
最初は、うまくいかないことも多いでしょう。

でも、こういうスキルは、使えば使うほど上達します。

「最初はうまくいかなくても、ずっと意識していれば、だんだん上達してくる」

そういうものだと思ってください。

慣れてしまえば、「ほとんど頭を働かせなくても、手が勝手にやってくれる」というレベルに到達します。

エクセルマクロも同じですね。
エクセルマクロも、慣れてしまえば、「ほとんど頭を働かせなくても、手が勝手にやってくれる」というレベルに到達します。
もしあなたがエクセルマクロの習得で多少でも成功体験があるようでしたら、「文章を書くこと」に、そのときの感覚を転用してください。


日本語力を高めることは、言語能力そのものを高めることです。
言語能力を高めれば、エクセルマクロを書く能力も高まります。

それに、日本語能力が高まれば、上司や同僚からの評価も高まります。
パソコンスキルが高く、説明能力、プレゼン能力も高いあなたのことを、上司も、上司の上司も、「論理的思考力の高い、自分の片腕を担う、重要な人物」と見てくれることでしょう。
上司からは、重要な相談がどんどんやってくるようになります。

こうなってしまえば、こっちのもんです。
あとは、自分のスキルを思う存分発揮していれば、どんどんキャリアアップのチャンスもやってくることでしょう。

逆に、「エクセルだけはどうやら詳しいらしいけれども、話をさせると、ただダラダラ長いだけで、何が言いたいのかが分かりにくいヤツだ」などという烙印を押されてしまうと、最悪です。
そのとき、あなたを待っているのは、残念ながら、「面倒な作業を高速でやってくれる、人間計算機」くらいの扱いです。
重要な相談は、いつも別の同僚のところに行ってしまいます。
あなたは、誰かが決めたやり方で高速で作業を行うだけのマシーンです。
そんな扱いにあなたがもし不満を持ったとしても、誰も、真剣に耳を傾けてはくれないでしょう。

もしあなたが「エクセルマクロのスキルを活用して、さらにキャリアップをしたい!」と考えられているようでしたら、ぜひ、日本語能力の向上にも日々意識を向けてください。
また、くりかえし述べますが、エクセルマクロのスキルの学習も、やり方次第で、日本語能力向上に役立つ、貴重なトレーニングになります。

日本語能力向上のための学習も、エクセルマクロの学習も、言語能力、論理的思考力の開発という意味ではまったく共通です。
どちらかを伸ばせば、もう一方も勝手に伸びます。
どうせなら、日本語能力も、エクセルマクロも同時に伸ばしていきましょう。

  • 「論理的思考力が高い人」とみなされて、どんどんチャンスがやってくる人生
  • 「パソコンが得意なだけの、残念な人」とみなされて、、酷使されて消耗して終わっていく人生
  • 「パソコンも文章もダメな、あまり使いものにならない人」とみなされて、、まったくノーチャンスで終わっていく人生

あなたは、どの人生を選択したいですか。

「このサイトでいっしょに学習する」というご縁を頂いたあなたには、せっかくなので、「どんどんチャンスがやってくる人生」を歩んで欲しいと思っています。
そんな思いから、このコラムを書きました。
このサイトで、偏りなく様々なスキルを学んでください。

あなたにとって、この場での学びが、一石二鳥、いやそれ以上の、生涯に渡って黄金が湧き出す泉を得るような機会になりますように。