ITスキルを取得するとは、「中間領域」レベルでマネるということ

今回は、「ITスキル取得とは、何を、どういう手順で獲得することなのか」という点を明らかにしたいと思います。

ここ何回か、IT用語の「モデル」という言葉を軸にしてメルマガをお送りしています。
「モデル」とは、「根本となる世界観」のことです。たとえば、機械学習分野で「モデル」と言えば、それは、「こういう数式で、起きている現象を上手に説明できそうだ」という世界観の提案のことです。データベースの構造のことも「モデル」と呼んだりします。

関連して、「メンタルモデル」という言葉を紹介しました。
「メンタルモデル」とは、心理学用語で、人がその内側に有している世界観のことです。

前々回は、「メンタルモデル」の例として、ゲシュタルト療法の「外部領域」、「内部領域」、「中間領域」という分類について書きました。

「外部領域」、「内部領域」、「中間領域」とは、それぞれ、以下のようなものです。

・外部領域:
自分の身体の外側の世界です。実在します。

・内部領域:
自分の身体の内側の世界です。実在します。

・中間領域:
思考領域です。あなたの意識の中に存在するものです。

世界を3つに分類する-ゲシュタルト療法の 「外部領域」、「内部領域」、「中間領域」
https://forum.pc5bai.com/tips/longshot/1c6de382-66ea-4680-a220-e8c5accbf353/


この分類は、ITスキルの活用と習得の様子を説明するのに好適です。


IT系のスキルというのは、以下の順序で発揮されるものです。

中間領域で構想し(だいたいの工程を思い浮かべる)

内部領域で実装し(身体を使って書く)

外部領域に成果が顕れる(実行可能なコードがある状態になる)


一方、学習の段階では、スキルは、以下の順序で習得されます。

外部領域で学び(見る)

内部領域で学び(身体を使って試す)

中間領域で学び(頭の中だけで書けるようになる)


たとえば、「市区町名を『区』という文字で分割し、それぞれ別のセルに入力するということをくり返す」という作業のために、最終的に以下のようなコードを書くとします。
Sub SikuBunkatsu()
    Dim siku As String
    Dim ku As Long
    Dim gyo As Long
    For gyo = 2 To Range("A" & Rows.Count).End(xlUp).Row
        Range("A" & gyo).Value = gyo - 1
        siku = Range("C" & gyo).Value
        ku = InStr(siku, "区")
        Range("F" & gyo).Value = Left(siku, ku)
        Range("G" & gyo).Value = Mid(siku, ku + 1)
    Next
End Sub

実務でこのようなコードを書き上げるとき、人は、以下のプロセスを踏みます。

中間領域で構想し(だいたいの工程を思い浮かべる)

内部領域で実装し(身体を使って書く)

外部領域に成果が顕れる(実行可能なコードがある状態になる)


一方、「こういうものを自力で作れるようになる」とき、人は、以下のプロセスを踏みます。

外部領域で学び(見る)

内部領域で学び(身体を使って試す)

中間領域で学び(頭の中だけで書けるようになる)


今回はエクセルVBAのコードを例にしましたが、「VLookUp関数」でも「ピボットテーブル」でも、どれでも同じです。


では「どのようにして上記のような習得の手順を踏めば良いのか」というと、いちばん簡単なのは、「演習問題を、解答解説動画と同じ手順・同じ操作で解く」ということをくりかえすことです。

これにより、以下を満たすことができます。

・外部領域で学ぶ(動画を見る)
・内部領域で学ぶ(動画で学んだとおりに、身体を使う練習をする)


さらに、慣れてきたら、「動画と同じように解説しつつ解く」ということをくり返してください。

これにより、以下を満たすことができます。

・中間領域で学ぶ(動画で学んだとおりに、考える練習をする)


実務に即した演習問題について上記のように取り組むことで、実務でマクロを書かなくてはならなくなったときにも、

中間領域で構想し(だいたいの工程を思い浮かべる)

内部領域で実装し(身体を使って書く)

外部領域に成果が顕れる(実行可能なコードがある状態になる)

というプロセスをササッと踏めるようになります。


最終的には、お題を見た瞬間に、

・エクセルファイルを開いて
・Visual Basic Editor を起動して
・標準モジュールを追加して
・sub ... と、サブプロシージャを作って(...の部分ほぼイメージできている)
・あの行から書いて
・テストして
・テストの成功を見届けて
・あの行を追加で書いて
・テストして
・テストの成功を見届けて
・そこまでに書いたコードをサンドイッチするコードを書いて
・テストして
・テストの成功を見届けて

...

というすべての工程を、お題を見せられた瞬間にササッとイメージできるようになるところを目指します。
また、上記の個々の工程でも、「『自分はマウスを使っているけど、動画内ではショートカットを使ってよりあっさり書き上げている』といった箇所があったならば、その工程のやり方をマネしてモノにする」等の改善をしていきます。


言い換えれは、動画の内容を丸パクりするだけなのですが。
「ただ見てマネして動かしてみる」というだけでなく、「中間領域でモノにする」という意識で取り組むことが大切です。

ITスキルを取得するとは、「中間領域に染み込ませるようにマネる」ということです。
  • あなたが得意なスキルを、2つか3つ挙げてみてください。

    そのスキルについて、あなたは、どんなイメージをできますか。
    そして、それだけ具体的かつ広範囲に配慮したイメージを思い浮かべるのは、初心者には困難だということに、改めて意識を向けてみてください。

    この差が、熟練者と初心者との間にある、数回見て体験するだけでは埋められない「中間領域」のギャップです。

    そして、あなたは、その中間領域に格納されたスキルの獲得のため、どのように、外部領域・内部領域を活用したでしょうか。
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ガラパゴスの演習問題と解答解説動画は、すべて、今回のメルマガで紹介した方針で作っています。

以下は、一連です。

エクセルマクロ・VBA基礎編フォローアップ ベーシック
https://forum.pc5bai.com/lesson/course/27/

各演習には、実施報告画面も用意されています。
ワークに取り組む都度、「かかった時間」、「良かった点」、「修正したい点」等を記入していきます。
自己の成長を確認し、より最適化された手順をモノにするために好適です。
https://forum.pc5bai.com/work/coding/?course=27


関連のメルマガバックナンバー:

世界を3つに分類する-ゲシュタルト療法の 「外部領域」、「内部領域」、「中間領域」
https://forum.pc5bai.com/tips/longshot/1c6de382-66ea-4680-a220-e8c5accbf353/


ITスキル習得/活用の「外部領域」、「内部領域」、「中間領域」
https://forum.pc5bai.com/tips/longshot/f4dff66d-645f-4b6f-ab87-6ea0a89e0d63/

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