「より大きな場の一員」として在る

前回のメールマガジンに、以下のようなフィードバックをいただきました。

>組織的盲点のお話、とても興味深いです。
>今ちょうど、大多数のメンバーの入れ替わりがほぼない組織に一時的に派遣されてますが、複数の会社を見てきた立場から思うのはまさに、異常な状態を正常だと思っているような違和感です。
>
>アンケートをワードで作成、エクセルで集計していたり
>統合するエクセルに過剰にパスワードを掛けたり、セルを統合していたり、、、。
>
>新しい文化やどんどん進んで便利になっているシステムなどの受け入れを拒んでいる(そもそも知らない)感じです。
>
>私自身はむしろ、変化に馴れているのですが、長期的にはそのような古くからある文化に多少迎合する必要があるのかなとも感じています。
>
>このような問題に何かヒントをいただけると有難いです。
>
>よろしくお願いいたします。


前回のメールマガジンで、以下のようなことを書きました。


「なんで、この会社では、こんな問題が起きてしまうのだろう」と思えてしまうようなとんでもない不祥事をテレビのニュース等で見ることあります。

最近であれば、中古車販売会社のことが話題です。


人間には、所属する組織や環境に慣れることで、異常や不都合な状態を正常と受け入れてしまう傾向があります。

このような状態を示す言葉として、前回、以下の4つのものを紹介しました。

1. 組織的盲点 (Organizational Blindness):
2. 確認バイアス (Confirmation Bias):
3. 煮詰め効果 (Boiling Frog Syndrome or Boiled Frog Effect):
4. 正常化バイアス (Normalization of Deviance):


人がこれらの言葉で示されるような状態に陥ってしまう理由としては、誰もが共通に持っている以下の3つの意識が挙げられます。
・人は、基本的に、自分はうまくいっていると信じたい
・人は、基本的に、変わりたくない
・人は、基本的に、所属する場でより受け入れられたい


そして、前回は、以下のように結んで終えました。

>これらのバイアスや心理的効果は、どのようにすれば乗り越えることができるのでしょうか。
>個人としてできることは限られていますが、この点について近いうちに書きたいと思います。

今回は、前回の続きを書きたいと思います。
いただいたフィードバックへのお返事というより、より一般論的な話です。


前回の〆で、「個人としてできることは限られている」と書きました。
この制約は超えられないという前提で書きます。


「誰もが共通に持っている意識」として、以下の3つを挙げました。
・人は、基本的に、自分はうまくいっていると信じたい
・人は、基本的に、変わりたくない
・人は、基本的に、所属する場でより受け入れられたい

特に、3番目の「場」の力は強力です。

人は、自由な選択を行っているように見えて、その実、場に受け入れられるように行動しようとする生き物です。

人は社会的な生物なので、「社会から受け入れられない」ということは、「その社会での死」を意味するからです。

現代社会では「あの村からあの町へ」と転居したり、「あの会社からあの会社へ」と転職したりすることは比較的容易です。

ですが、原始社会ではそのような自由な選択はできませんでした。
「村八分」という言葉もありますが、「村社会」や「職業集団」において、「所属する組織で受け入れてもらえない、組織からの協力を一切得られなくなる」ということは、即、死を意味することでした。
そんな時代に人に染み込んでしまった本能のようなものです。

本能的なものなので、「所属する場でより受け入れられたい」という欲求は、無意識レベルで強力です。

「場に支配されている」とも言えます。


そんな中、冒頭に引用したご相談に「どうすれば」ということを回答するならば、「自分がいる組織(勤め先の会社)」も、あくまで、「自分が関わっている、たくさんある場のうちのひとつ」というくらいの心持ちでいることです。

簡単に言えば、「場の支配から逃れる」という言い方もできます。

そのための提案をいくつか挙げるとしたら、以下のとおりです。

1. より多くの場に普段から関わること
2. 「より多くの場」からなる「さらに大きな場」の一員として関わること
3. 選択の自由を持つこと


1. より多くの場に普段から関わること

まずは、自分の職場を「自分が属する」、あるいは「受け入れられている」、「唯一の場だ」という意識を持たないで済むようにすることです。

もしも「唯一の場だ」という意識になってしまえば、その場で受け入れられないことは、「村八分→死」という恐怖の本能が働いて人は無意識にその場の要求に従うようになってしまいます。

転居の自由、職業選択の自由を有する社会にいるということに改めて気づき、「ここだけが、自分の居場所ではない」という意識を健全に持てることが大切です。


2. 「より多くの場」からなる「さらに大きな場」の一員として関わること

「自分が所属する場」というものは、意識次第でその範囲を自由に変えることができます。
複数の場が、より大きな場を形成します。職場を関わるときも、「職場の一員として」と同時に、「より大きな場の一員として」関わるようにすることです。

これについては「システミックコンステレーション」などの心理学のアプローチで語られている前提をもとにもっと詳しく説明できるのですが、今の段階では、「半分観察者のつもりで関わる」という意識でいるくらいをイメージしていただければと思います。


3. 選択の自由を持つこと

最後に重要なのは「選択の自由を持ていること」です。

近隣住民にとって当然とされている習慣に対して「これはおかしい」と感じたならば、「いつでも転居できます」という自由を持つこと。
職場で当然とされている習慣に対して「これはおかしい」と感じたならば、「いつでも転職できます」という自由を持つことです。

「選択の自由」がない、すなわち、事実上、そのムラから抜け出せない状態では、「半分観察者のつもりで関わりたい」と思っても、ただの皮肉屋になるだけです。


僕がパソコンスキルの講座をあなたに提供している理由のひとつは、上に挙げた「選択の自由」をあなたがより豊かに持てるようになってほしいという思いからです。


「自分の居場所は息苦しい」となったとしても、「これはおかしいと思うから、本気で組織に関わって、変革していきたい」と思っても、そのための手段を持ち、「やるだけやってみる。ダメならダメで、他に行くという選択肢があるから別に構わない」と思えるようでないと、人は本当には変われませんし、本当の意味でのチャレンジはできません。
  • あなたが関わっている職場以外の「より多くの場」としてどのようなものが挙げられますか。
    そして、さらにより多くの「場」と関われるとしたら、どんな場がありそうですか。
    あなたは、「今の職場を去りたくなったらいつでも去れる」という自由な選択肢を持てていますか。
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