最悪の失敗談を共有します- 自己実現の「方法の限界」と「スケーラビリティ」

今回は、自己実現の「方法の限界」について書きたいと思います。
前回までに書いてきた「キャパシティ」と「スケーラビリティ」というテーマの延長の話です。

事例として、僕自身の痛い失敗談を紹介しています。


前々回、「キャパシティ」と「スケーラビリティ」という言葉を紹介しました。

キャパシティ:
「このやり方で、どこまで仕事をこなせるだろうか」という量的な限界のことを指します。

スケーラビリティ:
「このやり方の延長で、どこまで仕事をこなせるだろうか」という応用範囲の限界のことを指します。

「キャパシティ」と「スケーラビリティ」
https://forum.pc5bai.com/tips/longshot/6d6d93f4-1681-466e-b305-b5d7aa66ceac/


前回は、『学習法の「スケーラビリティ」-応用力のある「学び方」とは』ということで、「汎用的に使える勉強法とは」という話をしました。

学習法の「スケーラビリティ」-応用力のある「学び方」とは
https://forum.pc5bai.com/tips/longshot/d01d5d49-63e0-47fe-88a3-19dd32306068/


抽象度を高めたこのような見立て方をできるようになればなるほど、学習法の「スケーラビリティ」を高められます。
「応用力のある『学び方』とは、ひとつのひとつの学びから、より抽象度の高いノウハウを得る『学び方』である」とも言えます。


前回までで、「エクセルマクロ」のような「プログラミング言語のスキル習得」と、「ビジネス文書ライティングのスキル習得」との共通性について調べてきました。

たとえば、「エクセルマクロ」と「ライティング」のスキルは、前者は理系的、後者は文系的でかなり異なるスキルに見えますが、「DPR」のようなフレームワークで見てみるとひとつの仕事を完成させるまでの思考プロセスには共通点が多く、データベースの構造を除けば実質的に同じスキルと言えます。
工程で使われるショートカットも共通です。


あるいは、「エクセルマクロ」のようなプログラミング言語のスキルも、分解すれば、以下の4つのスキルの組み合わせです。
- ITスキル
- 仕組み化、効率化能力
- 言語能力
- 学習能力

これらの能力についてもともとの準備がある人のほうが有利です。
また、プログラミング言語の習得の過程で、上記のような能力を強化することができます。この強化に成功すると、別分野での学びがまたより容易になります。

エクセルマクロ習得に関係する4つの能力
https://forum.pc5bai.com/article/4skills/


今回は、上に挙げた4つの能力のうち、「学習能力」に意識を向けてみましょう。
「学びの階層構造」として、以下のような階層を紹介しています。

階層1: エクセルマクロ
階層2: ITの勉強
階層3: 理系科目の学習
階層4: 学習法
階層5: 目標達成・自己実現

ひとつひとつのスキルを学ぶときは、より深い階層のことも同時に学ぶこと。

たとえば、「エクセルマクロ」の勉強をするとき、「ITスキル的な視点で見たときのデータ整理のやり方も学んでいる」という視点で学べば、Accessなどのデータベースについて学ぶときのよい足がかりになります。

エクセルマクロ習得の過程から「学習法」そのものについての学びを得られたならば、ほかの学びの機会にそのノウハウを活かせます。

「手元のエクセルをより使いこなすための方法」について学ぶことを通じて、「目標達成・自己実現」の方法についても学ぶことができるでしょう。

すべては、「ひとつの事象から、どれだけの気づきを得られるか」ということ次第です。
いつも書いている、「気づきと選択」という話につながります。

エクセルマクロ習得に関係する4つの能力 - 学習能力
https://forum.pc5bai.com/article/4skills/#learning


ところで、学習法にそのやり方の「キャパシティ」、「スケーラビリティ」があるのと同じように、目標達成・自己実現にも、そのやり方の「キャパシティ」、「スケーラビリティ」というものがあります。

たとえば、エクセルでも「100万行を超えるデータを扱うには不向き」といったキャパシティ的限界があります。
あるいは、「エクセルマクロをガンガン書いても、1,000万行を超える複数のビッグデータをマッチングするような物量の解析には不向き」といったスケーラビリティ的限界があります。
エクセル自体、複数人で同時にファイルを編集するには非常に不向きです。

これと同様の限界が「目標達成・自己実現」分野にもあります。
しかし、そうとは思ってもおらず、「手に入れてたまたまうまくいった道具でトコトン押し切ろうとして失敗した」という痛い経験が僕にはあります。


今回は、「目標達成・自己実現」について、「キャパシティ」、「スケーラビリティ」を無視して痛い目にあった僕自身の経験をひとつ例としてとりあげたいと思います。


「ナポレオン・ヒル」という自己実現プログラムの草分け的存在が提唱していた「プラスアルファの魔法」という言葉があります。

「いつも、相手の期待以上のアウトプットを出すようにしましょう。すると、『プラスアルファ』で提供した以上のものがいつかどこかから返ってきます」というものです。

良い言葉ですね。
部分的に正しいです。

この言葉に出会った当時の僕は、倉庫会社で働くグータラ社員でした。
しかし、この言葉に触発され、会社でのアウトプットに必要以上によいクオリティのものを出すように務めるようになりました。
それは、僕にとっての、会社や社会との関わり方が180度変わるような内的変化でした。

結果、途中に1社を挟み、2回の転職で、IT系のスタートアップで年収1,200万円をもらうところまで行けました。
これは、倉庫会社のころの手取りが15万円台だった自分にとって、大変な変化でした。

単純な僕は、「そうか。このやり方をずっと続けていけば、どこまでもいけるんじゃないか」、「『プラスアルファの魔法』という言葉を信じてどこまでもやっていこう」そう思いました。

しかし、残念ながら、これは「成功法則」のようなものがもつ「キャパシティ」、「スケーラビリティ」をまったく考慮に入れていない思い込みでした。

当時の僕は、そのやり方でいけるキャパシティの限界にとっくに到達しているということに気づいていませんでした。
そのIT系の会社でも、僕は、「プラスアルファの魔法」という言葉に従い、いつも必要以上のクオリティの仕事をすることに務めました。
キャパシティの限界は、量をこなすことで解決しようとました。最後の半年くらいは、週3回くらいは深夜2時くらいまでの残業をくり返していました。

「エクセルシートには100万件しかデータを格納できないのに、1,000万件のデータを格納しようとして、シートを10枚にして無理やり処理する」というような仕事ぷりでした。


「スケーラビリティ的な限界」にも意識がいっていませんでした。
「こんなやり方でも、『プラスアルファで提供する』という意識を持って行い、そしてやりきれば次があるだろう」と信じていたのですが...。

そんな働き方でなんとか一連の仕事をやりきったところで、上司と同僚に思わぬところで足元を掬われました。
僕は心身を壊し、失意のうちにその会社を去りました。


そのときのことを今思えば、上司や同僚とももっと上手に対応できたのかもしれません。
でも、キャパシティの限界を超えて仕事に打ち込んできていたのですでに心身に余裕はありませんでした。
また、「プラスアルファの魔法」というマントラに支配されていた自分にとっては、「足元を掬われた」という状況が理解できませんでした。信念に支配されて思い込みで状況を見てしまっていたということも、対処に失敗したことの原因でした。

諸々は、僕にとってさらに残念な結果に落ちていきました。


「プラスアルファの魔法」という言葉の魔法が解けたのは、その会社を退職してほどなくしてでした。
僕は、人が作った概念に過剰に支配されていた自分に気づきました。

どんな言葉も、ある場面では有効であり、また別の場面では有効ではない。
言ってしまえば、それだけのことでした。


この体験から、僕は、以下のことを学びました。

「自己実現・目標達成のための良い言葉」のようなものも、「エクセルマクロ」とか「Python」、「DPR」、「ショートカット」といった道具/概念と同様に、ただの機能でしかない。
「機能を有する」という以上の期待を持つと、その言葉にとらわれてしまう。

「自己実現・目標達成のための良い言葉」のようなものにも、「キャパシティ的限界」と「スケーラビリティ的限界」がある。
「そのやり方でうまくいっている間」しか通用しない。

ひとつの「良い言葉」のようなマントラに自分の人生を過剰に委ねてはいけない
特に、「これさえあれば、これを貫き通せばうまくいくんだ」と強く思わされたものほど要注意。



「学びの階層構造」として、紹介した以下の階層をもう一度紹介します。

階層1: エクセルマクロ
階層2: ITの勉強
階層3: 理系科目の学習
階層4: 学習法
階層5: 目標達成・自己実現

「ひとつひとつのスキルを学ぶときは、より深い階層のことも同時に学ぶことが大切」とすでに書きました。

「手元のエクセルをより使いこなすための方法」について学ぶことを通じて、「目標達成・自己実現」の方法についても学ぶことができるでしょう。

僕がこのメールマガジンをあなたにお送りしているのは、あなたに、あなた自身の「目標達成・自己実現」を成し遂げてもらいたいからです。

とはいえ、どんな自己実現方法にも、「その方法で行ける限界」があります。
その限界とは、「キャパシティ的な限界」のことであり、あるいは、「スケーラビリティ的限界」です。

一時的にうまく行っているように感じられる方法ほど要注意です。
それを過剰に信じることでいつの間にか「キャパシティ的な限界」を超えてしまいます。また、「スケーラビリティ的限界」という視点で言えば「そのやり方の延長でどう工夫しても行き詰まってしまう」という域に到達してしまいます。


エクセルの運用でそれを実感できれば、より深い階層にある「目標達成」についても同様なのだと気づくことができるかもしれまぜん。


IT技術においてもそうですが、「目標達成・自己実現」のために必要なのは、より多くの選択肢を持ち、特定の観念に支配されすぎずに自由に気づき、選択できる自由です。
僕がよく書いている「地図と手順・気づきと選択」とは、この「選択肢を持ち、自由に選択できる」ようになるためのヒントです。

100万行のデータになるまでは、エクセルでも良いでしょう。ファイルを複数人で同時編集するのでなければエクセルでも良いでしょう。
ただ、「その方法ではもううまくいかない」というタイミングはいつかやってきます。

「目標達成・自己実現」でも同様です。
「エクセル」のようなお気に入り道具があったとしても、「プラスアルファの魔法」という言葉のようなお気に入りのマントラがあったとしても、それだけにとらわれるのではなく、その道具なりマントラなりを客観視できることが大切です。

それが、このメールマガジンでもたびたび書いている、「気づく」、「選択する」ということです。


このメールマガジンは、「こんなことについて気づくこともできるよ」という情報をお伝えしているものです。そのような情報のことを、このメールマガジンでは「地図」と読んでいます。

よい地図を持つことで、より多くのことに気づき、より豊かな選択をできるようになります。
豊かさとは選択の自由です。
「エクセル以外の選択肢も自由に持つ」ということと、「人の言うことだけを過剰に信じず、自分の感覚に従って自分で人生の選択をする」ということとには共通の要素があります。

自己実現の過程では、常に自分のアプローチのキャパシティとスケーラビリティを意識することが重要です。
  • あなたの「座右の銘」のようなもの何でしょうか。
    また、あなたがかつて大事にしていた「座右の銘」のようなものはありますか。

    それらについて、少し客観的にみてみるのもおもしろいかもしれません。

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