「拡張現実」というより「増加現実」?輸入された概念への訳語のあてられ方について考えてみる
> ありがとうございました。知らない単語だなぁと思いつつ調べることをしなかったので勉強になりました。
> ポケモンGOというスマホゲームにARが実装されていて、アプリ内でカメラを起動するとポケモンが映り込むので、自宅のリビングにポケモンがいるような写真を撮る事ができます。
> アニメのポケモンさながらの、ポケモンと共に遊ぶ気分が「増加」する体験を得られるのだなぁと理解しました。
https://forum.pc5bai.com/tips/longshot/52f08aa5-2d8d-4685-818c-d050761b44d7/#cid49
「絶妙の例が出てきたな...」と感じました。
(何がどう絶妙なのかという点については、次回のメルマガで書きたいと思います)
拡張現実の実装例をほかに挙げるならば、たとえば、最新の知見によって行われる学術的な説明などがあります。
たとえば、以下のような感じです。
◯お城や古代の王墓などの史跡に行ってスマートフォンを向けると、「◯◯時代の建築で、総延長◯メートルで、...」といった説明が表示される
◯古代生物を展示する科学館・博物館でどこかにスマートフォンを向けると、在りし日の恐竜の姿が浮かび上がり、動き出す
商用利用としては、「『ぐるなび』などの飲食店評価サイトのアプリがインストールされたゴーグルをつけて街を歩いていたら、飲食店という飲食店が目にとまる都度、その店の評価情報が表示される」なんていう近未来もありそうです。
(僕は、そんな未来は好みませんが)
前回、augment という単語の意味をネットの辞書で調べてみた結果を紹介しました。
>to increase the size or value of something by adding something to it
>(何かを加えることで何かの大きさや価値を増加させること)
cambridge dictionary:
https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/augment
ChatGPTに聞いてもだいたい似たような回答でした。
>**English Definition**:
>"Augment" is a verb that means to make something greater by adding to it; to increase.
>
>**Japanese Translation**:
>「Augment」とは、何かに加えてそれをより大きくすること、または増加させることを意味する動詞です。
cambridge dictionary の回答でも ChatGPT の回答でも、「to increase (何かを加える)」という言葉が登場します。
「拡張」というより、「増加」現実という感じですね。
「拡張」という日本語にふさわしい英単語を探すなら、「extend」とか「expand」、「spread」とかそういうところでしょう。
「増加現実」と訳すほうがよりふさわしい感じです。
とはいえ、日本語で「増加現実」と聞かされても、なんかすごそうな感じがしない。
ただ、「拡張現実 (Augmented Reality: AR)」という言葉の背後にあるコンセプトは、現実の上にデジタル情報や画像を「追加」して、現実を「増加させる」または「拡張する」という意味になります。
そのため、このコンテキストにおいては「拡張する」という訳語も適切と言えるでしょう。
しかし、"augment" の原義に立つと、日本語の「増強する」「増やす」などがより直接的な訳としては適切です。
現実を単に拡大するのではなく、情報やデジタル要素を加えることで、現実の体験そのものを豊かにしています。
それにもかかわらず、技術や産業界における用語として「拡張現実」という訳語は、日本国内では広く受け入れられています。
用語の選定には、原語の意味だけでなく、文化的・歴史的背景や語感、使われるコンテキストも影響する要素として考慮されることが多いです。
「拡張現実 (Augmented reality)」はその好例とも言えるでしょう。
海外から持ち込まれたIT用語、概念への訳語では、しばしばこのようなことがあります。
今日では、AIの力を借りれば、訳語の比較だけでなく、「そのニュアンスについて検討する」といった学びも対話形式で比較的容易にできるようになりました。
今回のこのメルマガを書くにあたって、僕も、ChatGPTを利用しました。
いつもいつもそんなことをする必要はありませんが、「?」と思ったときにささっと調べるひと手間から得られるリターンは以前より大きくなりました。
次回は、「では、『拡張現実』は、本当のところ、何を『増加』させているのだろうか」というところについて書いてみたいと思います。
- 今回は海外で作られた用語が日本に持ち込まれるときの訳語選択について、その一例を紹介しました。
反対に日本から海外に持ち出される用語もありますし、そのときに日本語のままで輸出されてしまうようなものもあります。
たとえば「Karaoke」、「Sushi」、「Tsunami」などです。
「カラオケ」は「空のオーケストラ」という意味ですが、英語で「empty orchestra」と言えばかえっておかしな意味になるでしょう。
「スシ」は食文化そのものとして日本に固有です。
「ツナミ」は現象としては海岸線がある地域ではどこでも起きる自然現象ですが、日本語がそのまま国際的に通用しています。
前回配信メールマガジン: 「拡張現実(AR: Augmented Reality)」の "Augmented" て、何よ?
https://forum.pc5bai.com/tips/longshot/52f08aa5-2d8d-4685-818c-d050761b44d7/
nkyy328
さん
からのフィードバック
2023年10月2日8:45
絶妙な例を無邪気に投げた者です。
10/2のメルマガで史跡に向けると…で、以前知り合いにもらったカレンダーにそんな機能があったなぁと思い出しました。
カレンダーに印刷された都市の写真にスマホを向けるとスマホ内で動画や音楽が流れ、旅行気分が味わえました。
これも絶妙な例の一つでしょうかね。
10年ほど前に銀行で勤めていた頃の上司が、今後の技術として、街中で物件にスマホを向けると査定や物件購入価格、個人データから算出した融資可能性(だったかな)などが見られ、その場で融資申し込みなんかも可能になるぞ、なんて言っていました。
2024年11月20日 21:41
小川 慶一さん
2024年11月20日 21:28
AIユーザさん
2024年11月14日 17:04
小川 慶一さん
2024年11月13日 18:12
AIユーザさん
2024年11月13日 18:11
田中 宏明さん